（４）

まりこの「まり」って「鞠」だっけ「毬」だっけ「麻里」だっけ？

ウリヤさんはわたしとまりこのために湯気の立っているマグを持ってきてくれた。

雪のように白いマグの中には薄黄色をした飲み物が入っていた。

「これは、カモミールティーですか？」

「いいえ、それは、一日中ひなたにあった雪を沸かしたものなんです」

ウリヤさんは微笑みをたたえながらそういった。たしかに、カモミールティーのあの蜂蜜のような香りではなくて、ひなたの匂いを甘くしたような感じだった。

「体の芯から暖まりますよ」

わたしはそれを少しずつ飲んだ。そうしたら、ほんとうに体が芯から暖まってきた。

「おいしいね」

「うん」

「おしっこみたい」

まりこはクスクス笑いながら、わたしにだけ聞こえる声でそう言った。

「うん」

わたしも笑った。

「まだわたしのことを愛してくれてる？」

わたしはマグから立ち上る湯気越しにまりこに聞いた。

「うん、もちろん」

まりこはマグから立ち上る湯気越しに答えた。

「よかったですね」とウリヤさんが天使のように微笑んだ。