素晴らしすぎ。全９９トラック、７０分近いアルバムには中だるみのようなものはまったくなくて、むしろ後半に行けば行くほどテンションが高くなっていくような気さえする。
トラック数の方が収録「分」よりも多いことから分かるように、トラックあたりの時間はほとんどがとても短い。数秒しか続かないトラックの中の実際に音が入っている時間は一秒くらいしかない場合もある。
で、どんな音が入っているかといえば、唇や口蓋、喉を普段声を出すときとは違った方法で使うことによって出る音、ということらしいのだけど、確かに子どもの頃そういう音を出してふざけて大人に窘められたりしたような、そういう音が入っていたり、まるでツグミとかヒヨドリなんかが囀っているみたいな音が入っていたり、電子的な発信音みたいな音が入っていたり、ものすごく小さな悲鳴みたいな音とか、唾を飲み込むような音とか、そのほか得体の知れない音を聴くことができる。ここでは説明のためにそういう音を記号化してみたわけだけど、ＣＤを聴くときはそういう「どんな声？音？」というのはとりあえず脇に置いといて、という態度で臨んだ方が、たぶんずっとスリリングだし、楽しめると思う。
それと、コンデンサーマイクで録ったということなのかもしれないけれど、周囲の微妙な音が録音されているところが、「声」と一緒になって独特の空間を作り出す（ダイナミックマイクだったらごめんなさい。聞き分けられるほど耳がいいわけじゃないので）。
最後のトラックのあの感じは、何かを作り上げた後のほっとした感じというか、とても満たされた気持というか、そういう何かを作り上げていると思う。ほっとした感動、といったら近いだろうか。[2003/07,2004/04]