80年代初頭、ニューロマンティックといわれるムーブメントがあった。デュラン・デュラン、パニッシュを始めとした彼らはメイクを施し、華麗なな衣装に身を包み中性的なイメージを漂わせていた。そこにはグラム・ロックのような退廃感は無く、当時の時代を反映してかかなり軽い感じのものだった。アダム・アントもそのムーブメントの中で脚光を浴びた人間だが、人一倍苦労した人間だけにどこかシリアスさを感じた。
派手なメイクに海賊や貴族といったコスプレに近い格好のせいか、話題がルックス面中心で音楽が当時正当に評価されたとは思えない。"Prince Charming"は中世ヨーロッパの御伽噺的雰囲気にインディアンビートを合わせた今聞いても斬新なものだったし無比でもあった。ヒット曲"Stand and deliver"以外にも華麗なホーンセクションで始まる"Scorpios"他聴き所が多くもっと正当に評価して欲しかったという思いがする。突如注目され閃光を放った彼だがこのアルバムの後彼を待っていたのは成功からの転落であり、光の時代はあまりにも短かった。