performing arts, films & movies 200103
ＤＶＤで鑑賞。
笑いました。まいまい的には結構気持ち悪い画面もあるけど、笑いました。しかし、カタツムリの殻をビデオに撮るってのは私もやってみたいですね。DVDには特典でカタツムリの殻や洗濯機のビデオも収録されてます。あと、美容院のぐるぐるする看板を撮るビデオも。ほかには予告編とかメイキングとか。
しかしまあ６０６号室というのは(笑)。あと、最初の方で画面の隅っこの方で空がぐるぐるしてたりするのもよいです。
ヒトマイマイってのは私のことか？(笑) 山の方へ這っていきますかね。
ＢＯＸ東中野で３月１０日から河瀬直美の特集をしていて、とにかくどうしても見たいのが「につつまれて」と「萌の朱雀」。その「につつまれて」と同じ日に見た作品。
河瀬直美特集そのものはこの少し前から始まっていて、それは気付くのが遅すぎて見損ねたのだけど、「につつまれて」のあとの、祖母三部作も、予定が合わなくて見損ねてしまったのだ。
今日は河瀬直美のトークショーがあって、見に行きたかったのだけど（まだ間に合うけど）、どうしても体力的に無理そうなのであきらめることにしたのだ。残念。
で、「幸福モドキ」だが、短い作品で、8mmの画質だとＢＯＸのスクリーンでも十分な解像度が出ないのだなとか余計なことを考えてしまったのだけど、その辺の画像の粗さがまたよかったりするのだ。
画面の大半が空で、その一部に人物が写っていたり、ものすごく音が悪いのだけどめちゃくちゃノリのよいハーモニカの演奏とか、満員電車の会話――向かい合って座っている二人の顔を下から撮ってるのが印象的だとか、どこかの広場か公園みたいなところで主人公の女の子が床屋さん（にしか見えない）に髪を切って貰うとか、そういう感じだ。あと、ひよことか。
「無差別幸福」って言葉がよかった。でもこれをある人に言ったら「無差別降伏」と勘違いされたのだけど、それもまたよいのであった。
今回どうしても見たかった作品のひとつ。河瀬直美が戸籍謄本を手がかりに父親を探しに行く。
ある場所の写真がカメラいっぱいに写され、その写真が画面から外れるとその向こうに現在のその場所が映る、というのはたぶん単なる技術の問題ではないのだろう。同じように、河瀬直美自身の顔がいくつも多重露光的に重ねて映し出されるところも。
あと、父親に電話をするところで模様ガラス越しに映し出される夕日、というのは、たとえそういう場面で写される夕日が紋切り型だとしても、それとはまったく違ったものなのだろうと思う。
あと、延々とオルゴールをバックにする場面とか。場面の多くは忘れてしまったけど、水田に撮影者の影が落ちて、オルゴールの音楽は「八十日間世界一周」だったりする。途中で音楽が止まると、またねじを巻いて音楽を続ける。
母親に、父親と会った、という電話を掛けるのだけど、父親との会話が「河瀬直美というものです」「直美？」「そうです」みたいな感じなのに、母親とのそれはもっと親しみのある親子のそれで、それは父親と生き別れになった事情が関わっているのだけど、「映画」のなかで一連のものとして語られるとそれとは少しだけ違った意味合いも見えるような気がする。
この日見た中で、いちばん映画らしい映画。
ガードマンをしている青年が、日常の中で、人を好きになって、それが突然中断される、という物語。
青年は毎日街の中心部まで自転車で通って、あるビルの正面に一日立ち、そこでは毎日同じようなことが繰り返される。
家に帰ると同じような日常が繰り返される。ただ、それは短調かもしれないけど、厭うべきものとしては描かれていない。
ある日近所に飲みに行った青年は、そこで少し年下の女性と会い、たぶん淡い恋心を抱く。たぶん女性の方も（女性、って言い方はうまくないかもでも、二十歳を過ぎた女の人を「少女」っていうのもなぁ）。
その後、青年は勤め帰りにその女性を川沿いの道で見かける。女性は夕日の見えそうな日はいつでも夕日を見に来るのだという。二人は一緒に夕日を見る。
日曜日、青年は女性と一緒にお祭りに行く。たぶん、その頃から二人は確かにお互いを好きになり始めているのだろう。
でもそのとき、青年が事件に巻き込まれ（それについては書かないけど）、その関係は突然中断されてしまう。
映画のほとんど最初からそう感じていたのだけど、何気ない日常の愛おしさを、「死」を消失点とするパースペクティブの中に捉えているのだ、と思う。青年の死は消失点を指し示しているのであり、描かれているのは、うつくしい、あるいは愛おしい日常であり、そういった「場所」において人を好きになる、ということなのだ。
ほんとはもっと見に行くはずだったのに体調崩したりして見に行けなかった河瀬作品。
で、昨日はとうとう「萌の朱雀」なのでした。そう、私はまだ見ていなかったのです。というよりも、今回のイベント以前に河瀬直美の作品をまともに見たことはなかったのでした。
たぶん「萌の朱雀」が公開された頃からぼんやりとした興味はあったのだけど、その興味を決定的にしたのはあるテレビ番組がきっかけでした。それについては以前書いたので、興味のある人は[url]をクリックしてみましょう。
昨日は映画の始まる前にトークショーというのがあって、もちろん河瀬直美が出演して、対するは吉行由実という人で、この人のことは全然知らなかったのだけど、ピンク映画の監督なのだそうだ。もともとは女優で、そこから監督になったという経歴の方のようです。
二人はそれまでぜんぜん面識がなかったのだそうだけど、だんだん話が盛り上がってきて、結局予定していた時間を十分くらいオーバーしてしまったのでした。
どんなことを話していたかといえば、恋愛体質が似ているとか、監督というのは孤独で、なかなかうち解けて話し合える人がいないとか、今日から公開の「火垂」のこととか、映倫通らないと言われてたとか（性交する場面とかでは腰に布を掛けるとかしないとダメなんだそうです。でも暗いからＯＫだったとか。あと、産婦人科の場面では、器具を体内に挿入する、というのもダメなんだそうです）、吉行さんが女の人にも映画を見に来て欲しいけど、場所が場所だけに何が起こるかわからないからなかなかそういうわけにも行かないとか、「萌の朱雀」のラブシーンの感覚がすごくよくわかって、うるうるしたとか。などなど。
なんか、お二人はかなり共感しあっているようでした。
映画は十分遅れくらいで始まりました。
河瀬直美の映画を見ているとき、「私」というものは決して消え去らない、といのが前回見ていて感じたことのひとつなんですけど、「萌の朱雀」でもそのことは強く感じました。それは決して悪い意味で言っているのではなくて、自分の中の引き出しをこまめに開けて参照する、という感じでしょうか。
映画を撮り終わったあとで監督自らが書いた「萌の朱雀」という小説があるのですが、それもかなりよいのですけど、でも映画の方が、ずっとたくさんのことを伝えているのでした。説明は少ないのですけど。
あと、リアルさと物語らしさが相互に侵食しあっているとか。たとえば村の人たちの会合、などは恐ろしくリアルだし、でも、カメラを向けられてはにかむおばあさんは、物語の中の人のようであったり。
それから、家族っていうのはやるせないなって。家族っていうのはエロティックだなって。家族っていうのは強く、しなやかで、でも脆いなって。
いちばん美しい場面は、女の子が従兄に手を引かれてお祭りの中を歩いていくところかな。たぶんあそこに映っている人たちはカメラを意識しているのだけど（だから振り向くのだと思う）、そういうのを含めてものすごくよいのです。
そうそう、さっき書き忘れたけど、吉行由実さんは「さびしんぼう」という映画が好きなんだそうです。実は密かに、私もあの映画は好きなんです・・・ああ、石を投げないで(笑)
河瀬直美の作ったJUDY AND MARY最後のプロモーションビデオ。２７分もあるので、なかなかオンエアされないとか（本人談）。
このバンドには特に思い入れはないのだけど、これはすごい。曲は都合二度演奏されるし、確かにちょっとだけプロモーションビデオっぽいところもあるけど、ほとんどドキュメンタリーというか。でも、その少しだけプロモーションビデオっぽいところがすごくよかったりするのだけど。メンバーがメンバーに8mmカメラを向けてインタビューしたり、ストリングスと一緒のレコーディング風景を邪魔になっているとしか思えないほど至近距離から撮ったり。つまりどアップ。
すごく映像が粗かったりするのだけどもちろんそれは計算されてのことだろうし、でもそのかわり、映っている物に対する解像度の高さは例によってものすごかったりする。
ファンは必見だろうけど（河瀬直美及びJUDY AND MARY）、そうでない人にもちょっと見て欲しいかもしれない。そんなに機会はないだろうけど。
「萌の朱雀」の尾野真千子と三船敏郎（字がわからん）の娘三船美佳の二人をモデルに、河瀬直美の友人でもある写真家・有元伸也が撮影し、それを河瀬直美が撮る、というドキュメンタリー。
タイトルは、二人のモデルと写真家との関係を表わしているのだろうね。
作品は河瀬が有元にこの企画を持ちかけるところから始まる。たぶんこの部分は8mm。粗い映像。
ロケ地は被写体二人の故郷である吉野と東京。最初は吉野。有元は真千子と引き合わされ、吉野の山中や、真千子の通っていた中学校で撮影される。有元はイライラしているというか気乗りがしないというか。画面自体もなんというかそんな感じ。ある程度撮影が進んだところに美佳がやって来て、二人を被写体にしての撮影。それから今度は美佳だけの撮影。河瀬のインタビューで話が父親のことになると美佳は涙を流し、河瀬は飾るな、という。それから、山の中で、長時間無言でカメラが美佳を写し続ける。見ている方が痛い。有元の撮影は、美佳を被写体としたときの方がうまく行っているように見える。
次は東京。最初に美佳。いじめられもした、という通っていた学校での撮影。吉野山中よりもずっと生き生きしている。有元も生き生きしている。街中へ出ても、とてもよい感じで撮影が進んでいくが、緊張感というよりも勝手知ったる、という感じ。
それから再び真千子。真千子は東京が怖いという。有元の真千子に対する距離感。よそよそしい。河瀬が交差点で演出してみせるが、ありきたりかもしれないけどそこだけくっきりと浮かび上がる感じ。河瀬、有元に疑問を呈する。私が作った画を撮っていていいのか？
撮影続行。有元、今ひとつ精彩に欠ける。原宿（？）のオープンエアのカフェ？で、河瀬、有元をぼろくそに言う。そんなのアイドルの写真集とおんなじじゃん？有元、多少反論するけど、最後には無言で河瀬のカメラを見つめるだけ。それから、真千子といくつか言葉を交わす。
河瀬の写す画面は、そこから一変する。半分ヤケクソなのかもしれないけど、有元、新宿の歩道橋で真千子と打ち解けた、というよりも私的な感情を半ば見せながら、そういう会話をしながら、真千子を撮る。そう、私はこういうのが見たかった、というような河瀬の画面。
「きついこというけど」と前置きして、有元は真千子に最初はそんなに取りたい被写体ではなかったと告げる。美佳はそうでなかった。もっともっと知りたいと思わせる何かがあった、と。
そうやっているうちに、それまでのベスト、というような画が撮れたらしい。真千子は河瀬に、風、ということを伝える。実はそれ以前に「風」は画面に捉えられていて、私の中ではフラッシュバックした。そしてロケ隊はあるビルの屋上へ。真千子は風に身を任せ、有元はものすごい勢いで写真を撮り続ける。最後の一本、というところで真千子はほとんど官能的な領域に達する。
最後に、河瀬が有元にインタビュー。というよりもお互いにカメラを携えて相対する、ということなのだろうけど。
最後の、有元と真千子がそれまでになく精彩を放つ当たりから、映画は畳みかけるように進むのだけど、そこでは同時に解像度がどんどん上がっていく。撮影に使われた機材はフィルムもありビデオもありで、そういう意味での解像度とういのは低めだけど、被写体の発散する何かを見つめる、見極める力というのがあって、それがここでいう解像度なのだ。画面が被写体を理解する力、といってもいいかもしれない。
そしてたぶん、今回見た河瀬直美の何本かの映画について言えるのは、そういった意味での解像度の高さ、ということではないかと思う。
たぶん、それは昔の作品よりも今の作品においてのほうが向上していると思う。
でもそれはそれとして、「につつまれて」はすごくよいのだけど。
あと、有元と真千子の最後の「対決」を見ていて思ったのだけど、一般化できるかどうかわからないけど、河瀬の写している有元のカメラは、不思議なほど攻撃的ではない。官能性というのは確かにあるのだけど、私のカメラに持っているイメージとはずいぶん違った、ほとんど受け身といってもいいほどの官能性なのだ。
この映画でドキュメントされた写真集をぜひ見てみたいですね。