半年ぶりに友人Ａと会った。まずは二人ともお気に入りの某書店へ行き、堪能。
それから場所を移してお茶。ダージリンとザッハトルテ。ダージリンはいわゆるマスカットフレーバーと美しい水色を楽しめたので満足。ザッハトルテはもう少し甘いほうが好みかも。
いろいろなことを話した。友人Ａの家庭の秘密とか、恋愛とか、結婚とか。
友人Ａの家庭の秘密については書けません。
恋には天上の恋と地上の恋があって、前者は不毛、後者は難しいけど実りも大きい、ということで意見が一致。わたしは地上の恋をするのだと宣言した。友人Ａは「ははは」と笑った。
結婚については友人Ａの方が詳しいので（友人Ａは既婚者。わたしは未婚）友人Ａの意見にいちいち頷くばかりだった。結婚はたいへんだけどいい、と友人Ａは言った。わたしは死ぬまでに一度は結婚したいと言った。友人Ａは「ははは」と笑った。
そのほか何度か「死ぬまでに」と口にした。友人Ａは死ぬ予定でもあるのかと聞いたが、もちろん死ぬ予定も死ぬつもりも予感も何もないのだった。
死ぬ予定はないけど、春とか秋になると気分が滅入ることが多くてと言ったら、それは漢方医学で言うと陰と陽が入れ代わるシーズンだからだと言われた。あるいはそうなのかもしれない。
それから、わたしは蜂蜜のように純粋なのだと言われた。なんのことだかよくわからなかったけど、なんとなくその理由を聴くのが恐かったので「そうなんだ」と答えた。すると友人Ａは「ふふふ」と笑った。
というわけで、日記の題名は「純粋日記」にしようかとも思ったのだけど、やっぱり「蜂蜜日記」ということに決めた。
朝起きるととても天気が良かったので庭を散策。ちょうど花の境の時期で見るべきものも少ないが、そろそろ紫陽花が咲き始めようとしている。
よく晴れた日の紫陽花はどことなく哀れだ。
そろそろ庭の散策を終えようとしたとき、それに遭遇してしまったのである。なんかクサイと思ったら、猫の糞を踏ん付けていたのである。
許せません。犯人の目星は付いています。
今度会ったらただでは置かないつもりです。
そのとき履いていたサンダルは洗ってもニオイが取れなかったので、捨てることにした。悲しい。ジーンズはよく洗ったらなんとかきれいになったようだ。
そのあと紫外線が強くなってきたので屋内に。
午後から雲が出てきたので近所を散策。歩き回ると結構暑い。
夕食は麻婆豆腐。「麻婆豆腐のもと」みたいなものは使わないけど、本格的というものでもない。でもまあいいや。
夕風が涼しい。ちょっと気持ちいいかも。
「麻布の、とあるやしき町に、百メートル四方もあるような大邸宅があります。」（江戸川乱歩『怪人二十面相』）
なんか、冒頭に引用するのが流行っているらしいので真似してみる。ちょっとかっこいいかも。
今日は疲れた。疲れるのは毎日のことなのだが、今日は頭痛がするのでいつもよりも損した気分。気温は高いけど湿度が低めなので過ごしやすいはずなんだけどそれでも調子が悪い。でもでも健康診断なんかで血液検査をしても「血液がさらさらですね」とか言われるだけで、特に問題となるようなことは見つからないのだ、最近は。
月曜日に会った友人Ａは、それについてこんな説明をしてくれた。
普通の人の（内臓などの）体はふだん二十パーセントくらいしか働いていない。つまり、じゅうぶんな余力を残して働いている。そしてなにか特別な状況になったときだけフルに働く。
ところがわたしのようなやつ（食事や健康にひととおり気を遣っているにもかかわらず体調不調のことが多い）の場合、ふだんから体がほとんどフルに働いているので余裕がない。だからすぐに疲れたり調子が悪くなったりするというのだ。
でも余裕がないだけでどこかが壊れているわけではないので、血液をいくら調べても異常はみられないのだそうだ。
もしそうだとするなら、あんまり無理しないほうがいいのかもしれない。でないと、再び昔の体に戻ってしまうかもしれないし。
大学受験に失敗して予備校に通っていた頃、結核に罹ってしまったことがあった。幸いにして入院するまでにはならなかったのだが、受験勉強どころではなく、結局もう一年浪人することになってしまったのだった。
でも、今になって思うのだけど、あの経験も無駄ではなかった。結核の一つもやっていないようでは、文学を語る資格なんてないと思うから。
赤ちゃんが遊びに来た。もちろん一人で来たわけではない。友人Ｂが連れてきたのである。
友人Ｂと会うのも一年ぶりくらいだった。友人Ｂはいかにも健康そうで、同時に幸せそうだった。
友人Ｂはわたしを見て痩せたといった。確かに、この一年で体重は２ｋｇくらい減った。さらに、頬がこけたみたいだといった。きっと面相はますます悪くなってきているのだろう。
赤ちゃんは可愛い。無条件に可愛いと思う。すでに首はすわっていたが、全身ぷにぷにしていてさわりまくってしまう。でもあんまり嫌がられない。わたしは赤ちゃんとか子供とか動物から受けが良いのだ。でも人間の大人からだけはあんまり好かれない。なぜだろう。
赤ちゃんとはすぐに仲良しになった。でもきっと、次に会うときには忘れられているのだろうな。
そんなに赤ちゃんが好きなら自分の赤ちゃんを持てばよい、という人がいるかもしれないが、そういう意見は同性に対してだろうが異性に対してだろうがセクシャルハラスメントにあたる恐れがあることに留意されたい。
ところでわたしは自分の子供を持ちたいと思ったことは一度もない。
今日も体調不調。精神的に低調。歯が痛い。近日中に歯医者に行かねばならないだろう。
昨日は友人Ｃ、Ｄ、Ｅと共に広尾のオープンエアのカフェで文学の語らいのひとときを過ごした。
友人、と書いてしまったが、Ｅとは初対面なのだった。通信での付き合いではよくあることだ。
夕方ともなるとさほど暑くもなく、少し強めの夕風が心地好かった。
Ｃ、Ｄ、Ｅがてんでに好きなことを話して、わたしは仏蘭西産のワインを傾けながら会話に聞き入っていた。
「最近、詩作はどうかね？」
「うん、ぼちぼちだ。きみの小説はどうだい？」
「そうだね、世間をあっと言わせるようなものではないが、文学の名をけがさぬものを書いているつもりだ」
「リアリズムは流行らないものね」
「最近はシュルレアリスムなんてのがもてはやされているからね。でも、断言してもいいけど、あれは一時の流行にすぎない。アンドレ・ブルトンは芸術家というよりもむしろ広告屋なのだ」
「ふふん、きみらしい考え方だね。でも、いまでは広告こそが芸術なのではないか？」
「文学は必ずしも芸術ではないさ」
「詩は芸術であるが、同時に芸術ではない」
「ときにあなたはどう思う？」
わたしは曖昧に微笑んだ。
「ときに○○伯爵の令嬢が今度の舞踏会でお披露目をするらしいぜ」
「柳腰の美人だと聞いたが、本当か？」
「ぼくの聞いたところによると雪のように白い肌をしているそうだ」
「それならあなただって負けないだろうさ」
余計なお世話だ、と思ったが、黙って微笑んだ。それがわたしの役割だから。
「きみはカアル・マルクスを信じているのかい？」
「ぼくはマルクス主義者ではないさ」
「ではきみはいったい何を信じているんだい？」
「ぼくが信じているのは史的唯物観そのものなのだ」
わたしはそれを聞いて思わず微笑んでしまった。Ｄにマルクス全集をプレゼントしなくては、と思った。
その後六本木へ繰り出してカードをやりながらウォッカを痛飲。カードは見ているだけだったが。
深夜帰宅。気分悪し。
梅雨だというのに、今日も天気がよい。風が強くて洗濯物を飛ばされる。むかついた。
それからＥの風貌を反芻。髭がよく似合っていたと思う。ちょっと好みかもしれない。
元気をなくしている。暑いせいだ。食欲もがた落ちというほどではないがやや落ちている。水分ばかり取りたくなる。「なっちゃん」のペットボトルを半日で飲み干してしまう。非経済的。できれば麦茶を作りたいところだ。パック入りじゃなくて麦をそのままやかんで煮出すやつ。ぜったいにパックよりもあれのほうがおいしい。片付けるのはやや面倒だが。
庭がジャングル化している。何とかしなきゃならないのはわかっているけど、たぶん何とかしたら体が壊れるだろう。
体も神経ももっと頑丈だったらいいのに。
４月のガス料金を払い忘れていて、「早く納めんかい！」と電話が掛かってきたのが先週。「期限は１４日の夕刻」というのをすっかり忘れていて、今日になって支払ったのだった。電話を掛けたら「入金したあとでもう一度電話をよこすように」と言われた。なんか、連絡が行くのに時間が掛かるらしい。連絡しないとガスを止められたりするのかもしれない。去年の暮れ水道管が破裂したのにもまいったが、ガスを停められるのもすごく困りそうな気がする。
今日からエアコンを使えるようにした。機内が汚れているのか冷気がくさい。でも暑いよりはましなので我慢する。あんまり暑いと溶けるので。
持ち帰りの仕事がうっとうしくてワードを閉じて秀丸を開く。んでつらつらと書き連ねる、ＢＧＭは「ワルツ・フォー・デビー」。紫陽花。紫陽花。紫陽花。紫陽花紫陽紫陽紫陽。
紫陽花。いちばん好きな花、たぶん。ピンク色だったり紫色だったりするから移り気な心を宿している、というかアナロジー。なんてのをどこで調べたんだっけ？花言葉かな？わかんないけど。
以前友達Ｆが、「あなたが故あって古い屋敷に十二単を着て住んでいる夢を見た」って聞かされたことがあって、十二単を着たことはなかったけど、古い屋敷、というか古い家に実際に住んでいたので、いや、いまも住んでいるんだけど、なんだかじんときてしまったのだった。そんなことでじんとするというのは納得がいかないけど、しかたがない。
天才って概念はロマン主義が蔓延した時代に発明されたって何かで読んだけど、天才を乱発したい気分。友人Ｇは「おれはじみへん以外を天才とは認めない」とか言ってたっけ、そういえば。でもスコット・ラファロを天才の仲間入りさせたっていいよね。ビル・エヴァンスはダメ。天才じゃないほうがかっこいいから。
これを読んでくれているあなたも天才。あ、馬鹿にしてるんじゃないからね。単に天才の出血大サービス、というか乱発。
んでさあ、わたしの好きな小説家にＧＴって車みたいだけど、そういう人がいて、なんで好きなんだろうっていろいろ考えたけど、そういうものの考え方って言うのはたぶん違っている。
わたしはＧＴが好きだから好きなのだ。オマエは馬鹿か？なんて言ってはいけない。事実だから(笑)。でも、そういうことだ。わかりやすく言い換えると、「わたしはＧＴの書くものを愛している」。こういう態度ってのは、言うまでもなく批評を受け入れない態度だけど、好きだから好きってのに批評も何もねーだろー？ってのはある。つまり、ＧＴの書くものを好きかどうか、なんて問題はもともと批評とはなんにも関係ないってこと。
で、結局そういうふうにしか、わたしは小説を読むことができないし、きっとそういうふうにしか書くことができない。その割りにいやに理屈っぽいじゃねーか、なんて突っ込んではいけない。
たぶん誰も知らないかもしれないけど、高野まさこって漫画家がいて（高野文子じゃないよん）、その人のほとんど唯一の「ワルツ」って作品があって、そこには最初から最後まで（最後まで読んだっけ？）「好きだから好き」ってことが書いてある。
「実存」とか言うなよ。
もちろん紫陽花は好きだから好き。でもそれは「紫陽花が好きなことに理由はいらない」というのとは違うような気がする。
昨日は「甘」氏の送別会に行った。「甘」氏はもともと関西の人で、仕事の都合でしばらくこちらに関東に住んでいたのだが、このほど再び関西に帰ることになったのだった。
「甘」氏の人望の成せるわざか、多くの人が集まった。最初は喫茶店で穏やかに、文学や言葉について、などの話をする。
集合時間に間に合わなかった方が数人途中から合流したのだが、皆一様に地図がわかりにくかったということを申し立てた。喫茶店の位置を示した地図はゲストであり同時に幹事でもある「甘」氏が作成したものだが、たしかに幾何学的には間違っていないのだが、そのあたりの様子が地図から予想されるものとかなり異なっていたり、目標が少な過ぎたり、ということが問題ではないかという指摘が複数の人々からなされた。ある方などは「甘」氏には地図を作成する才能がない、とまで断言していた。
さらに、地図に添付されていた喫茶店の電話番号の市内局番が３桁であるなどの不備も指摘されたのであった。
六時前に場所を「甘」氏のアパートに程近い飲み屋に移した。その場所にしたのは、いつものように飲み潰れても周囲の人々を心配させまいとする「甘」氏自身による配慮である。
さて、理論・読書量・弁舌・毒舌・大声・腕力・酒・薬物などで武装した面々が「甘」氏を文字どおり取り囲んで論難する。「甘」氏の文学理論に異論ありとする反「甘」連合である。「甘」氏は一人で奮戦するが、多勢に無勢、ときどき駅まで途中からの参加者を迎えに行くと称して体勢を整えようとするが、「甘」氏のいないあいだに如何に「甘」氏を攻撃するかの作戦会議が開かれていたのである。
私も最初その包囲網を成していたのであるが、途中から離脱してＧ氏と文学の実践について議論する。Ｇ氏は梔子の鉢を育てているのだが、それがこの時期に文学を実践するための条件であろうというのだった。あの芳香を味わうことが文学であろうと。それに対して、芳香こそないが紫陽花を愛でてこそこの時期の文学を実践することだと反論した。庭の紫陽花を切って、机上の花瓶に活けてこそ文学であろうと。
結局わたしたちの議論は平行線を辿って、交わることがなかった。してみるとユークリッド幾何学的議論、ともいえるのかもしれない。わたしたちはそれぞれ梔子派、紫陽花派、と称することにしたのだった。
九時半にその場を辞したが、宴はまだまだ続きそうな気配だった。
今日はよい天気だった。湿度も低くて過ごしよかったはずなのだが、体調はよくなかった。昨日「甘」氏を論難した罰だろうか。
税金を支払いに銀行に行った。人であふれている、というわけでもなかったのにずいぶん待たされた。それだけで疲れてしまった。
実は今月中に支払わねばならない税金はほかにもある（住民税、というやつだ。今日のは○○○○税と○○○○税）。いったいいくら払えばいいのだろう。とにかく今月だけでもずいぶんな出費である。
銀行を出たところで突然雨が降り出す。書店へ飛び込もうとして思わずパン屋に飛び込んでしまう。仕方がないので苺のタルトを買って店内で食べる（そういうスペースがあるのだ）。
食べ終わる頃には都合よく雨も止んだ。隣の書店へ行き、京極夏彦のある本を探すが、どれも似たような題名なので探していたのがどれだったかわからなくなってしまったので断念。何も買わずに出る。
帰宅後突然ギターが弾きたくなり、弾きまくる。しばらく弾いていなかったので指が痛い。ピックは固いほうがいい。ヘッドホンでじみへんを聴きながらギターをかき鳴らして（じみへんのコピーが出来るほど弾けるわけじゃないので）「へいじょ〜〜〜」とか歌ってしまう。
夕方隣の人が回覧板を持ってきてくれた。「歌、お上手なんですね」と言われた。返す言葉なし。
うぅむ、日記を一週間くらいサボってしまった。ちょっと飽きたのかもしれない。
こないだの土曜日、友人Ｈと偶然会った。偶然知人と会うというのはわたしにとってはとても珍しいことで、近所の人と近所で会うというのを除くと、これが三度目くらいである。
Ｈは松葉杖を突いていた。なんでも広○苑机上版を素足の上に落として右足の親指と人差し指を骨折したのだという。そのくらいで松葉杖が必要なものなのか？と尋ねると、じゃあお前も骨折してみろ、と言われた。
Ｈとはひと月くらい前にも会ったのだが、そのときちょっとむかつくことを言われたので半ば冗談で（もちろん残りの半分は本気で）「呪ってやる」と言ったのだった。Ｈは「あの呪いが効いたに違いない」と言った。それなら、もっと本気で呪ってやれば右大腿部複雑骨折、くらいのことはできたかもしれない。
できれば呪いをきちんと学習してみたいものだ。
ところでＨが言ったむかつくこととはなにかといえば、「お前の歩き方は独特だから遠くから見てもすぐわかる」というものだった。余計なお世話だ。わたしは歩くのが下手なのだ。速いけど。
今日は午前中大雨が降って、空がかなり暗くなった。蝸牛日和というのにはちょっと暗過ぎ、雨降り過ぎ、風吹き過ぎ。薄暗く、雨がしとしと、少々肌寒い、というのが蝸牛日和のポイントだろう。