一度書いたのに、操作ミスで消してしまった・・・
同じことを二度書くのは退屈極まりないので違うことを書く。もちろん内容は重複しているが。
とても惹かれたのは、たとえば「自主憲法について」の最後でほとんど怒りとも投げやりともつかないような論調になっているところだったりするのだが、それは本書が講演をまとめたものであるためでもあるだろう。最初から書かれたものであるなら、ああいう言い方にはならないだろうから。
ほかにも読みながらいろいろ考えてしまったのだが、たとえば以下のような箇所（「湾岸戦時下の文学者」の最後の段落）にとても共感したのだった。
人々は、国家の問題をもっと現実的に考えるべきだといっていま す。しかし、近代国家を動かしているのは、実は文学です。だから、 「文学批判」が重要なのです。文学と無縁の政治家や実業家は、ナイ ーヴに文学的なんですよ。すると、文学者は何をなしうるか。文学者 だけが「文学批判」をなしうるのです。私はここでいわれている以外の意味での「文学者」なんてものを決して認めない。
このシリーズは刊行され始めたときから欲しいと思っていたのだが、なぜかなかなか売っているのにお目に掛からず、手に入らないままだった。最近大きな書店にあまり足を運ばないせいかもしれないが。
で、これは最新刊だったおかげか近所の書店で入手できた。ほかに第一巻も同時に入手。そちらには都知事の小説も入っているようだ。
この巻に収録されている作家は以下の通り――正宗白鳥/島比呂志/遠藤周作/結城信一/島尾ミホ/高橋昌男/色川武大/高井有一/川端康成/上田三四二/三浦哲郎/村田喜代子。
実は川端康成以外は初めて読む作家ばかりだ。困ったものだ。読書の幅の狭さというか。
で、少なくともこの巻に関して言えば、素晴らしかった。好き嫌いを別にすれば、どれもお手本になるような作品ばかりだと思う（そういう言い方は良くないかも知れないけど）。これからある種の大衆小説を書こうという人は必読ではないかと思う。というかそういう人ならこのシリーズ全部読めよって感じかな。
主観的なこと、つーか書評とか批評とぜんぜん別なレベルのことを言えば、老境の男性のエロス、というのは今ひとつぴんと来ないのであるよな。いや、川端的なのはなんとなくわかるんだけど、本書に収録されている類のは、今ひとつよくわからないのであるよな。
この中で特に好きだったのは以下の作品。遠藤周作『男と九官鳥』、島尾ミホ『海辺の生と死』（特に、牛をめぐる話は凄い。めちゃくちゃ短いけど）、高橋昌男『夏草の匂い』（これがベストかな、わたくし的には）、色川武大『墓』、高井有一『掌の記憶』。
この秋はろくでもないことばかり続いている。ＮＹではなく東京に住んでいるというのに。まあ、私に降りかかることといえば仕事に起因すること、私的な事情に関することばかりで、災害や事故のようなものに巻き込まれていないのはそれなりに幸運だと言えるだろう。とはいえそういうものにかなり接近したことも何度かある。果たして正月を無事に迎えることができるだろうか。
さてこないだまでのろくでもないことは私を読書から遠ざけたが、ここ最近は読書に接近させている。「読まずにいられない」というところかもしれない。これはあまりポジティブな意味ではない。「飲まずにいられない」というのに限りなく近いのである。そういえばワイン以外のアルコールは、舌を楽しませるというよりもいかに脳を麻痺させるかという用途に使われることが多い。実際、少しくらい麻痺していた方がうまく行くことも多いのだ。
そういうわけで、この巻も割と早く読み終わってしまった。でもこないだ読んだ「５」ほど楽しめなかった。たぶん、「青春」ってテーマが今ひとつ馴染めないせいかもしれなかった。
いやもちろん「青春」を軸にして読まなければならないなどということはないのだが、これは！と感じられるような作品が、実際少なかったのだ。
というか、それなりにおもしろく読めたし、優れた短編でもあるのかもしれないけど、なんだかなあ、なのである。少々鬱陶しい、というか。
本当にいいなあと思ったのは、太宰治の『眉山』と、北杜夫の『神河内』くらいかもしれない。
でもまあ石原慎太郎みたいにここにでも収録されていなければ一生読みそうにない作家もいたので、よしとしよう。
『オリエンタリズム』を読もうとしていたのだが、近所の書店にこれしかなかったのでとりあえず買って読んでみることにしたのだった。『オリエンタリズム』よりずっと安いし分量も少ないし。
サイードの考える知識人がどんなものであるか、というようなことは述べない。ネタバレになるというよりも、そんなことはこの本を手に取ればすぐにわかることだし、検索すればすぐにわかるような気がするし。
読んでるうちに柄谷行人みたいだって思ってしまったのであった。何か共通するところがあるような気がする。で、こういうのはすごく好きなのである。というか、ほとんど「柄谷萌え〜」とか「サイード萌え〜〜」って感じに好きなのであったりするのだ。「愛してます。でもこっそりと」みたいな。
読みながら、「私は知識人に値するだろうか？」なんてマジで考えてしまったのであるが、姿勢はともかく、私には体力的にも精神的にもそして何よりも脳力において、知識人としては如何ともしがたいのであった。
さて、アドルノに触れた箇所があるのだが、以下の部分にはいたく共感してしまったのであった。
「ちなみに、成功した状態とは、天の邪鬼的なアドルノの考えかたでは、安易にすぐに理解されることのないよう意識してつとめる状態をいう。とはいえ知識人は、完全に自分だけの世界に閉じこもってしまうのではない。アドルノがその生涯のずっとあとで語るように、知識人がいだく希望とは、自分が世界に影響をおよぼすという希望ではなく、いつの日か、どこかで、誰かが、自分の書いたものを自分で書いたとおりに正確に読んでくれるだろうという希望なのだ」
小説を書く人でも、こう思わない人なんていないと思うのだ。
これは青春篇よりも楽しく読めましたね。吉行淳之介はこれまでほとんど読んだことなかったんですけど、これ読んですごく好きになりました。
吉行淳之介の「寝台の船」は女子校で教えている主人公がまるでプイグの「蜘蛛女」みたいな男と知り合うという話なんですけど、すごくいいですね。すごくいいって何も言ってないのとあんまり変わらないけど。なんかね、女の心を持つ男が歳を取るに連れどんどん肉体が男っぽくなっていくというところがすごく悲しくて。
あと、野坂昭如の「マッチ売りの少女」は強烈ですね。これはすごい。坂口安吾の「戦争と一人の女」もなかなかよろし。武田泰淳の「もの喰う女」もよろし。これは以前村松具視の泰淳夫人の評伝にちらと載っていたような。田久保英夫の「密の味」も割と好き。
で、なんだかぜんぜんわからなかったのが河野多恵子の「明くる朝」。話としては理解できるけど、わたしには不透明な部分が多すぎるというか。
あとの話は普通かな、わたくし的には。
とそこまで書いてから＊＊さんの感想を読んで気付いたのだけど、いちばん感銘を受けた作品を挙げるのを忘れていました。なぜかこういうことがあるのだよな。ときどき。
件の作品とは富岡多恵子の『遠い空』。これはすごい。耳が聞こえず教育を受けていないために言語を解しない男に間もなく六十になろうという女性が性交を迫られ、それに応じてしまう、ということがきっかけになり、殺人事件にまで発展するのだ。
「……男が嫌いだからことわったのではなく、男が自分よりうんと若いからことわったのだ、若いからこわかったのだ、いやそれ以上に、若いくせに年寄りを女だと思ったことがいやだったのだ。年寄りなのに女だと認めたことがいやだったのだ、もう女ではないと思っているのにまだ女として役立たせようとしたことがいやだったのだ、そのためにまた今更無理矢理に女に立ち戻らせれるのが屈辱だったのだ、つまらない屈辱ではないか、女のくせしてなにが年寄りだ、年寄りだって女は女ではないか、……」
どうしてこれを読もうって思ったんだっけ？買ったのは確か去年。引っ越しの前。なんか知らんけど、その当時売れてるらしかったこの作者の作品を読もうって思ったんだろう、たぶん。今も売れてるのだろうか？桜井亜美。
読むのはなかなか苦痛だった。読み進めるためのエンジン（たとえば、「この先どうなるの？」みたいなもの）があるから何とかならないわけじゃないんだけど。
すでに大人になってしまった人、あるいはまんがや小説をたくさん読む人の多くは、私と同じようなことを思うかも知れない。
つまり、どれもどこかで見た「風景」だったりするのだ。
さらにいえば、全体に雑だし、しかも妙にこぢんまりしていたりするのだった（この小説は繊細さというようなものとはあまり関係がない）。
作者がどういうつもりなのかは知らないし、どうでもいいことだけど、つまりこの小説はあんまり本を読むのが好きじゃないけどたまには本でも読んでみたいと思うローティーンの女の子を対象としているのであった。ハイティーンでもいけるのかな？わからんけど。
だからわたくしが文句を言うのは当たらないというわけだ。
わたくしが読んだ限りでは、田口ランディの解説の方が素晴らしいのであった。つまりそれは、わたくしにはどんなに頑張っても田口ランディと同じような視点でしか物事を見ることができないということなのだろう。あたりまえというか、そうでなかったらかなり困るのだが。
まあ、たまにはこんなのを読むのもありかな。