表題作を含む短編集。もう、なんていうかめちゃくちゃいいなあ、大原まり子は。でもこないだ某インターネット書店にハヤカワ出てた文庫を片端から注文したら、すべてキャンセルされてしまった。手許にある以外の本を新本で手に入れるのはほとんど絶望的だ。あとは古本屋か。ブックオフとかに行けばあるだろうか？でもブックオフは近所にも通り道にもないし。
表題作他に出てくる女の子のイメージって、倉橋由美子の『聖少女』のヒロインを８０年代風に復活させたって感じがする。高慢で、頭がよくて、美しくて、繊細。
でもここに登場する女の子たちは自分の美しさに嫌悪を抱いている。というか見られることに苛立っている。それは理解されないことへの苛立ちなのかな？
こういうのをクソ暑い中で読んでたりするともうどっぷりと世界に浸ってしまい、しばらく帰って来れなくなったりする。原始的な快楽。
もっと読みたいけど、手許にあるのはあと一冊。これ読んでる人で大原まり子いらないって人がいたら、ください。よろしくお願いします。
もとになった本は1993年に出版されているので、もしかしたら少し内容が古くなっているかもしれないけど、それまでの知見についてはきちんと書かれているみたいだし（なんて私が言える立場じゃないけどさ）、難しい箇所もあるけど面白かった。
ただ、読んでいて脳の詳細な地図帳が欲しいと思った。ところどころに図はあるんだけど、もっと大きくてわかりやすい図があったほうがわかりやすいと思う。というか図がないとよくわからないのだ。今度本屋さんで探してみよう。
で、脳の中のことは解剖学的にはかなりよくわかってきている（つまり脳のどこでどんなことが行われているかということ）のに対して、化学物質がどのように作用しているかということについては、この本が書かれてた時点においてはほとんど「中世」と同じレベルにあったのだという。つまり複雑でよくわからない点が多いということだ。最近の研究では、それまで考えていたよりもずっと多くの化学物質が脳の中で働いていて、まだそれを解き明かすには至っていないということらしい。
たぶんそのせいだと思うのだが、脳の組織の一部を切除するというような、素人からすると恐ろしい手術が行われてきたらしい（ただし日本でどうなのかはわからないが）。
とにかく、脳の地図だ。模型でもいいのだけど。実物はちょっと嫌。
いくつかの出版社の共同企画である「書物復権」の一冊として復刊されたもの。何年か前に手に入れ損ねて悔しい思いをしていたところなので手に入れられてとても嬉しかった。
「偶景」とは訳者の造語で、もともとはアンシダンincidentということばで、そういうことばがフランス語にあるのかどうかはわからない。手許に仏和辞典がないからだ。揃えとかないと。とほほである。
で、偶景とは「偶発的な小さな出来事、日常の些事、事故（アンシダン）よりもはるかに重大ではないが、しかしおそらく事故よりももっと不安な出来事、人生の絨毯の上に木の葉のように舞い落ちてくるもの、日々の織物にもたらされるあの軽いしわ（プリ）、わずかに書きとめることができるもの、何かを書くために必要となるちょうどそれだけのもの、表記のゼロ度、ミニ＝テクスト、短い書きつけ、俳句、寸描、意味の戯れ、木の葉のように落ちてくるあらゆるもの。」というものらしい。incidentはアクシデントに近いのかな？英和辞典を引いてみると（ＣＤの山のしたから辞書を引き抜いたら山が崩れた。重力の勝利）、載っているではないか。
incident できごと；付随事件、小事件；事変、事件《戦争・暴動など》；《詩・小説中の》挿話；などなど・・・（リーダーズ英和辞典）
なるほど、である。
本書に収録されているのは「南西部の光」「偶景」「パラス座にて、今夜……」「パリの夜」である。それぞれについて説明することは私には無理だと思われる。でもきわめて俗っぽい言い方をすれば、「偶景」はモロッコに滞在の「経験」をもとにした断片、「南西部の光」はバルトの「故郷」ともいうべきフランス南西部に関わるエッセイ、「パラス座」は変転を経て、バルトが書いた時点ではディスコになっていたらしいパラス座に関わるエッセイ、「パリの夜」は「日記」、ということになるのだろうけど、それはたんにとっかかりとしてそうなのであって、鵜呑みにしないでくださいませ。
半ば俗っぽい読み方をしながら、すっかり堪能してしまったのでございます。
これ読んだの忘れてました。ちょっと忘れてしまうくらいの内容だったのかも。ごめん、源一郎さま。
つまんないとかいうことじゃなくて（いえ、ある意味そうだったのですが）、これが書かれてから「日本」がだいぶ変わっちゃったのかなって。つまり９０年代前半というのはこんなにも遠くなってしまったのかって。
リアルタイムに読めば、面白かったはずなんだけど。世の中、変わっちゃうものなんですね。
以前京都のある筋では超有名古書店に行ったときに買った、なんとなく。
で、カイヨワがどういう人かなんてことを私に聞くな。googleすれば適当な解説くらい見つかるだろう。
んーと、これを読んでいろいろなことを考えてしまったのだよ。これとは少し違うんだけど、ずっと昔私がとある分野の研究者になろうとしていたとき、これと少し似たようなことを考えていたのだ。でも、そのあと別な本を読んでるんだけど（それについてはまたあとで書くだろう）、それによれば、私が当時考えていたことというのは科学というよりもかなり白魔術に近いものらしいのだ。そうか、私は科学者よりも魔術師の適性の方があるのではないか、とか思ってしまったのだ。
で、カイヨワは別に妖しげなことを書いてるわけじゃないです、念のため。よく言われていることをまったく別な観点から分析して見せてくれる手いるのだ。でも『フェードル』なんて読んだことないし、そもそもよく言われていることがなんだかもわからないのだけど。
でもＳＦに関する論考では、ＳＦをまったく知らないわけじゃないのでかなりおもしろく読めた。
しかしもう少しいろいろ読んどかないとね。無理だろうけど。
最近神秘主義に傾倒している私であるが、本書はその興味から書店で見て買ったものである。
でも内容はちくまだからアヤシイ系ではない。魔術（白魔術）と錬金術を非常に風通しよく明晰に語ったものだ。もしエーコの『フーコーの振り子』を読んだり読もうとしていて、しかもこの手のことに不案内な人にはお勧めである。というよりも必読かも。
本書はもともと魔術と錬金術それぞれにかんする別々な本を一冊にまとめたものだそうで、前半後半がそれぞれに対応している。
魔術とは、白魔術と黒魔術に分けられ、いわゆるアヤシイ系は後者であり、前者は「自然」を把握しようとするひとつの思想である。その中心はマクロコスモスとミクロコスモスの照応という考え方であるが、詳しくは本書を参照してくれ。その考え方はそのまま後の科学に受け継がれていくわけではないが、科学との関わりについても本書に述べられているので参照されたい。
錬金術は、通俗的には「できるはずもないのに金を作り出そうとした怪しげな行程で、後の化学の下地となった」とされているが、著者は錬金術を「錬成術」と呼ぶことを提案し、技術的な面と精神的な面に分けて考える。つまり「錬成術」とは卑金属を貴金属に、つまり「卑」から「貴」へのプロセスを追うことによって、精神的にもより高みを目指す、という照応関係であるという。
魔術にしても錬金術にしても、ある意味新鮮な「知」であるが、大昔私の目指していたのは白魔術に近いものがあったかもしれない、などと思うのであった。やっぱり科学には向かないのかも。
しかしまあルネッサンスのイタリアというのはものすごいですね。