こないだは「うずまき」で、今度は「富江」。

　やっぱり笑える。

　最初は絵がすごくヘタで（デビュー作だとか）、でもアイディアはなかなかよくて（みんなで富江の死体を切り刻んで持ち帰って捨てる）、でもなんていうか凄惨なはずなのだけど笑いを取る部分の方が少しずつ多いというか。

　最近になるほど絵はきれいになって、富江もきれいになっていく(笑)。でもとにかく、凄惨な場面でも笑えてしまうのだ。富江をミンチにする話なんて、普通ならかなり気持ち悪い話のはずなのに、あんまりそういう感じにならない。富江のミンチで酒を造るところになると、もう、可笑しくて仕方がないっていうか。

　まあ、比較的まじめな話もあるのだけど、そんな話でも常軌を逸した部分で笑えてしまうのだ。

　恐るべし、伊藤潤二。

(1)での不満が一気に払拭された感じ。オーナーのしょぼい正体も明らかになったし、主人公伊賀くんの母親が登場したり、オーナーとの衝突が素晴らしすぎる。もう、読んでいて嬉しくて仕方がない！という感じ。すぐ書店に走れ！

「少女領域」読破計画の一環。

なんというか、私のために書かれたような作品。というのはもちろんある種の誤解だけど、そういう嬉しい誤解をさせるような作品。

機械帝国との戦いのために開発された宇宙戦闘用生体メカニックサンプルＢIII号の物語。サンプルＢ群の本質は核融合炉を中心に持ち、生物のＤＮＡをサンプリングして肉付けして、その生物のように振る舞うというものだ。ＢIII号は突然意志を持ち、軍を脱走し、少女のＤＮＡをサンプリングしその後少女として振る舞うようになる。だがそこにはあるおぞましい記憶も含まれていた、というような話、ってぜんぜん説明になってないけどネタバレしちゃうから。

以前学術文庫から出ていた現代語訳源氏物語の新装版。前のは一冊あたりの厚さが半分くらいで冊数が倍くらいだったような気がする。本文も読みやすいように多少手を加えてあるようだ。

一巻には、桐壺から葵までが収録されている。

源氏物語に関しては「あさきゆめみし」しか読んだことがなかったのだけど、それだと少し物足りなくて、でもとてもじゃないけど原文をいきなり読むのは私には無理そうだったので、とりあえず現代語訳を読んでみようか、という気になったのだ。

でも、作家の訳したのは、たとえそれば谷崎のものであったも、今の時点ではあんまり読みたくなかった。もっとニュートラルなものが読みたかったのだ。

まあ、学者の訳したものがニュートラルかどうか、という問題はあるかもしれないけど。

「あさきゆめみし」になくて現代語訳にあるのは「作者」の言い分という奴で（というか、「あさきゆめみし」の場合はそれが隠されている、といった方が正確なんだろうけど）、これが実に面白いのだ。なかなかに意地悪。

あと、「雨夜の品定め」なんだけど、これがまた何というか皮肉に満ちているみたいで。古典に詳しくない者の、粗雑な読みで申し訳ないんだけど、左馬守の語っていることっていうのはたぶん当時の紋切り型ってやつで（違ってたらごめんね）、そういうので「品定め」させちゃって、でもそのあとで夕顔の登場、と来るのはいかにも「うまい！」って感じ。あと、夕顔が六条御休所の生霊と思しきものに取り殺される（のでもないかもしれないけど）のも、すごいなって。

古今多くの人が虜になってきたのも頷けるという感じ。