『少女領域』読破計画の一環として読んでみた。なんつーか、村上春樹の都会的ディテールを昭和初期に持っていったような感じ。

「放浪時代」はほんとにそんな感じ。主人公は画家で、いまのところショーウィンドウの企画と飾り付け、という仕事で収入を得ている。基本的にはその日暮らし（こんなとき、ゾラの『居酒屋』における年金制度というのが妙に今日的だと思ってしまうのだが）、あと、身よりのない兄妹と一緒になんの束縛もない暮らしをしている。妹はいちおう女学校に通ってはいるのだけど、基本的には放浪者なのだ。

　状況を少しずつ今日的に変えたら、案外今風に読めてしまうのではないだろうか。

「アパアトの女たちと僕と」はもう少し暗め。

「Ｍ・子への遺書」は、竜胆寺雄が文壇に突きつけた絶縁状のごとき物。竜胆寺のいいたいところはわかるけど、同時にある種の単純さも感じてしまうのだ――それが悪いと言うことではないけど。今日ならもう少し楽に小説を書くことができたかもしれない、とも思うけど、なにしろこの人は長生きしていて、なくなったのは九年ほど前のことらしい。いろいろな感情を抱いていたらしい川端康成が死んでからずっと経ってからのことだ。

「文壇」から消滅してからも小説を書いていたらしいのだけど、それ以上にサボテンの栽培で有名だったという話で、その関係の本を何冊も出していたりするのだった。

週刊朝日に連載されているコラムの単行本化。これでこのコラム関係の本は三冊目か？

　あとで読もう、とか思っていたのに結局他の本をほったらかしてあっという間によんでしまった。中に書かれていることもだけど、結局高橋源一郎の書く文章がとても好きなんだろうなって思う。

　今度から、漫画もここに入れることにした。

　先に見た映画の原作。映画はこのうちのごく一部を編集して映像化したのだなって。ボリューム的に当然だけど。

　かなり笑えた。まいまい的に（って書くと怪しいけどさ）いちばん受けたのは、「台風一号」の目がカーブミラーに映ったところ。強風で傾いだミラーの下の「注意↑」ってのが。

　よく考えてみると解決されてないことがたくさんあるんだけど、まあそれはそういうものなのだろう。でもそういうことよりも、街から脱出しようとしたら植物とか時計の針とかが全部渦巻きになっている画、というのがすごく魅力的って言うか。ぜんぶワラビかゼンマイみたいになっているという。

　あと、映画の方が優れたアイディアだなと思われるのは、やっぱり洗濯機とビデオですね。あれは秀逸ですね。素晴らしいです。あれは桶よりもずっとすごいし、それをヒロインに発見させるというのがまたよいなと。

　読んでるうちに「ブラックエンジェルズ」とか、「漂流教室」を思い出しちゃいました。ヒトマイマイを焼いて食うってのは、やっぱり漂流教室的かなって。