金田一耕助ものは岡山県が舞台のものが多いのか？今度は兵庫県との県境付近での連続殺人事件。金田一耕助が休暇を過ごす地として磯川警部に紹介されて鬼首村で、次々と奇怪な方法で若い女が殺されていく。本文でも言及されているが『獄門島』の事件とその点においては似ている。

　けっこう長いのだけど、結局一日で読んでしまった。続きが気になるから、というのはもちろん、やっぱりある程度勢いで読んでしまいたい、というのもあるし。

　もちろんすごくおもしろかったけど、鮮やかさにおいては『獄門島』に負けているような気がする。そのかわり、別な意味での魅力があるとは思うのだけど。その魅力を具体的に書くことは、ネタバレになるのでできないけれど。

　東京大学地震研究所設立７５周年記念事業の一環としてまとめられた本。ジュニア新書に収録されてはいるけど専門外の人が読むにはとてもわかりやすいし内容もきっちりしているしで地震や火山についての最新の研究成果を知ろうとするには最適の一冊ではないかと思う。

　たとえば地震や人間の出すノイズ以外にも地球を振動させているファクターの話とか、どうしてハワイと日本ではマグマの性質が違うのか、とか、地震がかなり面的な広がりを持った断層運動であるとか、そういう話が注意深く読めば誰でもわかるように書いてある。

　ところで地球の内部がマントルや外核、内核からできていることはよくしられているけど、どうやってそれを知ることができたかわかりますか？わからない人は本書を読んでみてください。

　須賀敦子二冊目。こういう言い方は間違っているかもしれないけど、ほんとうに美味しい文章。書かれている内容もだけど、やっぱり文章が美味しい。というか、文章がおいしいから書かれている内容も美味しい。

　タブッキの『インド夜想曲』を読んだとき、あの終わり方を除いては恐ろしく美味しかったのだけど、それは須賀さんの文章を味わっていたのかもしれない。タブッキの小説はあれからなんとなく読む気がしていなくて、そのあたりのことは未確認なのだけど。

　本書を含めて須賀さんの書かれているものは「エッセイ」というくくり方をされていたのでなんとなく敬遠していたところがある。つまり、あのいわゆる「エッセイ」だったらどうしようかと思っていたのだ。

　これも、間違っているかもしれないけど、須賀さんの書かれているものはとても丁寧に作られた「短編小説」なのだと思う。小説の方がエッセイよりもエッセイの方が偉い、というようなことではない。ただ、どちらかというと小説なのかもしれない、と思う。それになによりもあのいわゆる「エッセイ」とは何の関わりもなくて、そのことからもちょっとだけそんなことを言ってみたかった、というのはある。

　全集も出ているみたいだけど、独立した一冊一冊を味わうように読んでいきたいので、単行本とか文庫本で読みすすめていきたい気がしている。

　ボルヘスの『砂の本』と『汚辱の世界史』を一冊にまとめたもの。『汚辱の世界史』には負のヒーローに焦点を当てているのだけど、その中には吉良上野介も含まれている。

　ボルヘスについてはこれ以上書けません。