河出文庫の香山リカ３冊連続文庫化の最後。今度は鈴木慶一、高橋幸宏、大槻ケンヂの３人との対談だ。みんな神経だったりするのだ。薬自慢とか病気自慢とかも出てくる。そういうのってなんか自慢したくなるよね。なんでだろう？
で、神経症を克服して、というわけでもない。まあ付き合って行くかしょうがない、みたいな。「みたいな」ってバカっぽくていいなあ、関係ないけど。
で、文庫版あとがきで著者本人が語っているけど、神経症ってやっぱりひそひそっぽいほうがいいよね。「神経症カミングアウト！（エクスクラメーションマークにアクセントを！）」とか「明るい神経症」ってやっぱり違うよっていうか、わたくし的には気持ち悪い。ひそやかな、「不健康」であって欲しいな。
金田一耕助はジャンキーだったことがあるらしい。表題作で金田一耕助は初登場するのだが、探偵を始めるようになるまでの来歴が簡単に触れられている。なんでもアメリカに渡ってジャンキーをしていたとき岡山出身のさる実業家と知り合い経済的な援助を受けカレッジを卒業、帰国後探偵を始めた、という次第。
ネタバレが怖いので内容にはあまり触れられないけど、この作品での金田一耕助はまだ二十代で、時代も戦前、ということになっている。でもあの風采はこのころから基本的に変わらない。
先の『獄門島』には及ばないけど、すごいなあ、おもしろいなあ、と思う。
最近ちょっとだけ（小説以外で）あてられている佐藤亜紀なんだけど、でも結局読み始めると全部読んでしまうのだった。読ませるだけのものがあるのはもちろんだけど、やっぱり文章そのものが好きなんだろうなと思う。だって、映画俳優の名前も監督の名前も取り上げられている映画だって知らないのばかりだし──オペラのほうがまだわかるくらいだ。
で、つくづく思い知らされたことは、私の趣味と佐藤亜紀の趣味というのはほとんど折り合いがつかないくらいかけ離れている、ということだ。正直言って私は個々の俳優にはそんなに興味がないし、逆にヌーベルバーグみたいのは、理屈抜きに好きだったりするのだ。別におしゃれっぽいとか政治的にどうだとかこれこそ芸術とか、そういうの全部抜きにしても、やっぱり好きなんだよな。それに、「映画は作品だ」っていうのにもすごく共感できるし。っていうか、俳優の見分けなんて付かないんだよ(笑)。
でも、古典的な作品が嫌いなわけじゃない。ハリウッド物だって全部が全部嫌いなわけじゃない。いったい私のスレッドってどうなってるんだ？とは思うけど。
強さに対する「弱さ」ではなく、「弱さ」そのものについて語って行く、というのが本書だ。その、「弱さ」の感覚が「フラジャイル（こわれもの）」なのである。
個人的には少し前からフラジャイル、というものにこだわっていたので、この本を見つけた時にはお金がなかったので買えなかったが、その後結局購入したというわけだ。
私がこだわっていたのはむしろフラジャイルという言葉の外見で、その感覚についてさえ考えていなかった。まあせいぜいこわれものどまり、というか。
本書では随筆のような形式で著者の「フラジャイル」を展開して行く。断片とか、曖昧とか、異端とか・・・どちらかというとマイナスに考えられてきたことやものを、プラスに考えよう、ということだ。
っていうのも違うかな。つまり、プラスに考える、といっても「それを補って余りある」というようには考えないのだ。欠落することそのものが強さに転じてしまう可能性を持つ、みたいな。
このあたりのことは、もう少しいろいろ考えてみたいと思う。いや、実践してみたい、のかもしれない。
『本陣殺人事件』に続いて本作。映画にもなったので知っている人も多いだろう・・・とはいってもあの映画はずいぶん前のものだ。いわゆる「角川映画」ではなかったかな？でも確か監督は市川昆だったし、金田一は石坂浩二だしで、かなり豪華な映画だったと記憶している。「すけきよ」と言えば、ある年齢以上の方ならば絶対に「ああ、あれか」と思い出すほど強烈だった。でも子供の頃に見たきりなので、愛憎とかそういうのはよく理解できなかったみたいで、肝心の筋書きはちっとも覚えていないのだった。だから楽しく読めた、というのはあるけど。
『獄門島』は瀬戸内海、『本陣殺人事件』は岡山だけど、本作の舞台は信州。イメージされているのは明らかに諏訪湖周辺だ（もちろん現実の諏訪と同一視してもしょうがないだろうけど）。生糸産業で立身出世した犬神佐兵衛の臨終に伴って起こる殺人事件・・・というわけだ。にしても、その後の生糸産業の凋落ぶりを考えると、別な意味で感慨はひとしおだ。事件のその後は？ってのが気になってしまうというわけだ。もちろんそんなの関係無しに面白いのだけど。