books200006
読み始めたときには著者あるいはドゥルーズにかなり違和感を感じたが、最後まで読んだらそれはかなり緩和された。
『差異と反復』は持っているし１３８ページまで読んだがそこで挫折してしまった。何が書いてあるのかさっぱりわからなかったのだ。
でも、もし私の読みが最低限のレベルで間違っていなければ、かつてある分野の研究者を目指していた私の考えていたことは、意外にもドゥルーズの考えていたことと（ほんの僅かであれ）似ていたのかもしれない。表面でなぞっていた、といったほうがいいかもしれない。それはものごとを微分的に考えるということで（ただし私は微分を使いこなすことはできなかった(笑)）、そのように考えなくては（使いこなせないということは理解できていない、ということなのでそれはとてつもなくインチキなのだが）、つまり「目に見えること」をそのまま素朴に分類するということに違和感を感じていた、ということだ。それを研究にうまく取りこむことは結局できなかったが（そりゃそうだろう）。
たぶん生物学とか解剖学において「分類」という行為はじゅうぶんに枯れていて、私はそれらの専門家ではないのでなんともいえないのだが、研究者たちはそういうものを括弧に入れて「生命」や「生物」に向かっているのではないか、という気がする。だから「分類」を無効にする、というのは確かに正しいし有効であるかもしれないが、微妙に的を外しているような気がするのだ。つまり、「分類」なんてほんとは誰も信じていないのではないかと思うのだ。
いや、著者はそんなことは百も承知で、でもやっぱりそういう樹状図的な配置を実際に葬り去らなければ結局はそれに依拠していると同じことである、ということなのかな。
私も分類という作業を行っていた（目的というよりもプロセスなのだが、結局は同じことだ）。だが結局うまく行かなかった。つまり感覚的に捉えられる何物かを数学的なフィルタで抽出することができなかったのだ。感覚的にはいとも簡単にできる操作が、機械的にこなそうと思うとなかなかうまく行かないのだ。
しかしそれ以前に入手したデータそのものが、「自然」であるといえるかどうか、という問題も、今考えれば存在していたのだが。
フラクタルについても考えてみたが、私の考えていたものはフラクタル的な側面を持っていないこともなかったが、そういうことを考えたいのではなかったのだ。
で、結局「わたしの見ているものはすべて恣意的なものだ。だが、恣意的であれ私にはそう見えるのだからそこにはなんらかの意味があるに違いない」などと考えてしまったのだ(笑)。
当然、それは自然科学ではない。自然科学は「善悪の彼岸」にあるのだから。
このあたりで先日読んだ養老猛の『唯脳論』と一緒に考えたらどうなるのか、果たしてドゥルーズの考えかたは人間中心的でないとしても、どうしたって「脳」を超えることはできないのではないか。
いや、超えているのだが、超えていないのだ、といえばよいのかな？
・・・意味のないことをだらだら書いてしまった。ごめん。バカ丸出しだけど、それでよいのだ。いまさら自らのバカを恐れることはあるまいよ。
ご存知柴田元幸によるアメリカ文学案内、とでもいうべき本。
こういうのを読んで幸せになれるのは、実際に読むかどうかはともかくとして紹介されている本を読みたくなる、ということだと思うのだが（それだけでないとしても）、たとえば訳されている『ハックルベリー・フィンの冒険』の一部を読んだだけでもかなり幸せだ（なんとわたくしは彼の書物を読んだことがないのだ！）。
しかし、『白鯨』のチャウダーの章は有名なのだな。わたしは彼の部分を大学のときに読まされたのだが（もちろん原文で）、その部分を読んでかなり幸せになってしまったのだった。"Clam or cod?"（だったっけ？）って聞かれて出てきたのがジューシーなチャウダーだったりするのだ。クソ寒いナンタケットの港町の宿屋で。あれを読んでチャウダーのファンになってしまったのはわたくしだけではあるまい。
でも、こういう本を読むたびに思うのは、読んだことのない、面白そうな本がたくさんある、ということだ。それほどたくさんの本を読むことのできないわたくしにとっては、いや、とんでもない消化力の持ち主であっても、嘆くべきことであり、同時に喜ばしいことであるに違いないだろう。
まだ母親が生きていた頃に、「家族」のあり方に付いて何度か話をしたことがあった。きっかけはテレビのしょうもないドラマか何かを見てのことだったかもしれないが、よく覚えていない。結論的なこととしては「家族」は必ずしも血縁的なものでなくともよい、というようなものだった。つまりあかの他人が集まって家族を作るというのもあり、ということだ。母親がほんとうにそう思っていたかどうかはわからないが、切実な問題ではあったかもしれない。配偶者はすでになく、私だっていつまでも母親と一緒に暮らし続けるかどうかわからないし、それに子供の世話になることを好ましいとは思っていなかったふしがある。
この小説の中で描かれている「空の家」は、そんなことを思い出させた。そこで「老後」を共に暮らすというのは「家族」として暮らす、ということなのだろう。実際、小説では「老後」をはるかに前倒ししした共同生活が営まれる。彼女たちは種々のデリケートな問題を抱えながらも、少しずつ絆を深めて行く。
でも、男にはこういうのは無理なんじゃないだろうか？私が感じている以上に、「男」と「女」の差異というのは大きいものなのかもしれない。
スミヤキ党工作員Ｑがある島の感化院に潜入し、そこで奇怪な人物と出会ったり事件に遭遇したりするのだが、Ｑ自身はそれによって少しも変化しないので、教養小説ではない。
というよりも、感化院の奇怪な風俗と登場人物がそそるのだ。『悪徳の栄え』の登場人物みたいに理屈モード入りまくったりしてるし。
今まで読んだ倉橋由美子の作品ではいちばん好きかも。
金田一耕助の登場する短編。某サイト訪問９９９目の記念として頂いたもので、二つの短編が収録されている。『女怪』は八つ墓村の事件で金回りのよくなった金田一耕助が出掛けた先の伊豆の温泉で事件の発端が起こる、というもの。『百日紅の下にて』は『痴人の愛』みたいな話で、ナオミにあたる（とはいえないか）女性が殺されて、それを何年か後に、復員してきた金田一耕助が解決する、というもの。この事件の解決の後、金田一耕助は獄門島に向かった。私も近いうちにその後を追うつもりだ。
『眠れぬ森の美女たち』は小説だったけど、こちらは心理学から見た恋愛ハウトゥーもの、みたいな。
よーわからんけど、世の中は自意識過剰な人たちで溢れているのかも。まあ私もその一員だけどさ。
ピンチョンの初期短編集。唯一の短編集でもある。序文は読んでいてちょっと苦痛だった。たぶん作品を読んでから序文を読むべきだったのだ。序文で卑下されている五つの短編は、実際にはかなりすごい作品ばかりなのであった。ピンチョンは『重力の虹』しか読んだことがないけど、それと関係のある人物なども出てくる（タイローン・スロースロップの親戚の医者とか！）。それに五つの作品の持つ違った感触も、『重力の虹』のそれだ。でもゴミ捨て場の地下に住んでいる侏儒の女の子と、その子の飼っている灰色の毛のふさふさしたネズミとか、『重力の虹』のどこかに出てきたおもちゃみたいにうっとりするほど切なくてきれいだ。
ピンチョンの他のも読んでみたいけど（『Ｖ．』とか）、長そうだからなあ・・・。
『女怪』から獄門島に渡った金田一耕助と私であったが、そこで見知ったことは驚くべきことだった・・・。何が驚くべきことかは言えないけど、驚くべきことだ。緊密な構成といい、金田一耕助のとぼけ方といい、冴えまくっている。
しかし、少しでも書くとネタバレになりそうなところがまた、すごいなあと思う。