books199907
オースターなどの翻訳で有名な柴田元幸と、佐藤”ヴァインランド”良明の二人によるエッセイ集。
以前白水社から出たときに読んでみようかなと思ったのだが、なんとなくそのままになっていたところへ突然の文庫化ということで早速買って読んでみた、という次第。
なんか、やっぱり「アメリカ」してる。どうもこの「アメリカ」というやつは６０年代から７０年代に「青春」を送った人たちに共通する何か、らしい。
面白かったけど、ちょっと鮮度が落ちたかなという感じ。エッセイは小説よりも早く傷みやすいのかもしれない。
柴田元幸の翻訳について書いたエッセイはお薦めです。
香山リカによる「自分探し」批判。というとちょっと乱暴かもしれない。というのも香山リカはそういった断定を周到に避けているように思えるから。
香山リカは私よりもやや先輩（××さんとは同い年？）で、８０年代を疾走し、いまでも８０年代サブカルの残党、という重荷を背負っている。これはとても勇気のいることだ。きっと死にたくなるほど恥ずかしい思いも何度もしてきているのではないか。
そういえば以前に上野千鶴子の「私探し」批判も読んだ気がするけど、内容は完全に忘れてしまった。
私などは「『自分探し』？あほちゃうか？」っていうやつなんだけど、香山リカも基本的にはそうらしい。ただし、精神科医なので「勝手に探してれば？」というわけにも行かず、それから８０年代の責任も大きく感じているのでこの問題に取り組んだ、といういことのようだ。
この人の歯切れの悪さというのは対象を完全には突き放せない、あるいは「それじゃあ自分はどうなんだ？」と考えてしまうところにあるような気がするが、私はやっぱりそういうところがとても好きだったりする。
これはものすごくお薦めです。
ある人から借りた本。
内容的には出版が１９９１年だから内容的にはやや古いけど、おもしろかった。著者は当時東大教授。
つまりはいわゆるビッグバン（金融じゃなくて(笑)）以前の宇宙のお話。宇宙が始まってから１０のマイナス４４乗秒後とかめちゃくちゃな数字が頻発するけど、もちろんトンデモ本の類ではない。まじめな宇宙論の啓蒙書。
で、ものすごく端折ってひとことで説明すると、宇宙は無から生まれてしかもできた宇宙から新しい独立した宇宙が無数に生まれるという。私たちの住んでいる宇宙はそのひとつにすぎない。
ひとつだけ文句を言うと、哲学に関しては類型的な思い込みをしていて、その思い込みによって断定している、ということ。これはなかなか避けられない事なのだが、自分のよく知らない分野を否定的に論じるときにはよくこれに陥るようだ。私も気を付けなくては。よく知らない分野には敬意を払って接しなさい、ということなのかもしれない。
まあ、タレント本なんだろうけど。でもすごい。なんか元気になれるよ（でも世の中にはＣＨＡＲＡの本よりももっともっと元気にしてくれるもの・ことがあって、それは信じられないほどすごいことだと思う）。
「私は作家になろう」って密かに決心した。
ちょっといろいろあって読み返してみたのだけど、すごいです。いやあ、漱石はほんとにすごいです。
ちなみにずっと未読だった『明暗』もぼちぼち読んでいるのだけど、これもすごい。こういう読み方は間違ってるかもしれないけど、「物語化」と闘っているようにも読める。