最近献血に魅せられている。といっても実際に献血に血道をあげているわけではない。それどころか献血したことさえない。
でも、献血センター（というのだっけ？）の前を通るたびに、献血していこうかとこころが迷う。
ところでわたしは注射が大嫌いで、ついでに血液検査も嫌いである。小学生の頃は注射のたびに逃げ回っていたので校医のあいだで有名だったらしい。それ以後成長するにつれて自制心が生まれるとともに極度のストレスがかかるようになったのか、注射や血液検査のたびに脳貧血を起こすようになった。
去年久しぶりに血液検査を受けた。本来なら毎年しなけらばならないはずだが、なんとかうまくごまかしてきたのだ。しかし去年の秋原因不明の微熱に悩まされたとき、肝臓になんらかの問題があるかもしれないということで、ついに観念したのである。頭から血が下がる思いだったのは言うまでもない。
しかしどうしたことか、そのときたぶんはじめて脳貧血を起こさなかった。注射器から目を逸らして、わずかな痛みを我慢しているうちにそれは終わってしまった。だが過去の例では注射後一分位してから脳貧血を起こしたこともあるので注意していたが、とうとうそういうことにはならなかった。
「わたしも成長したものだ」
というのが素直な感想だった。
ちなみに歯医者でされる麻酔の注射は好きではないが比較的耐えられる。歯医者ではそれ以上の苦しみが待っているので、あのくらいはどうということもないのだ。それはグラインダーで歯を削られることでもなく（麻酔していれば耐えられないこともない）、抜歯されることでもなく（これも、嫌なことは嫌だが耐えられなくはない）、歯の型を取られることだ。口腔内に異物を挿入されることは、耐えがたい。どうしようもない吐き気に襲われ、そして吐き気は痛みと違い我慢できない。
こういうわたしが、どいうわけか献血に惹かれている。肉体への異物の侵犯にあこがれているのか、さもなくば、自傷行為に惹かれているのか。